HR2011-01 表か裏か? メモリーカードを差す向きはどっち?

HR2011-01

表か裏か?
メモリーカードを差す向きはどっち?

2011.01.28 萩本

調査の背景

様々なメモリーカード使用機器

最近のメモリーカードの普及は目覚しく、様々な機器にメモリーカードスロットが付いています。多くの人が、何らかの機器でメモリーカードの抜き差しを経験していることでしょう。

ところで、みなさんはメモリーカードを差し込むとき、どちら向きに差し込むかで迷ったことはないでしょうか。一般的に、このようなカードスロットでは、間違った向きには挿入できない構造になっていますし、多くの場合、差し込む向きを示す表示もありますが、いつでもこの表示が見える状況とは限りません。当てずっぽうで「きっとこの向きだろう」と思って差し込んでみたら挿入できず、がっかりした経験がある方も多いのではないでしょうか。

実は、“正しい向きに挿入する/接続する”というのは、昔からあるテーマです。CDやMD、カセットテープ、テレフォンカード、USB端子などは、セットする際にはそれぞれ正しい向きがあり、その形状や状況によって間違いやすいもの、間違いにくいものもあるでしょう。一方、自動販売機に入れるお金、(日本で通常使われる)電気のコンセントはどちら向きでもセットできるようになっています。さらに、イヤフォンジャックなどは、そもそも形状的に向きの区別がないので、向きで迷うことはありません。

今回はSDカードを採り上げ、その差し込む向きについて調査してみようと思います。

調査のやり方

今回は、SDカードスロットが機器のどこにどのような向きで取り付けられているかによって、ユーザーが自然だと感じるカードの向きがどのように変わるかを調べることにしました。そのために、当社従業員および来社された被験者の方に、簡単な作業とアンケートをお願いしました。

1.作業

まず、正面、上面、右側面、左側面に、それぞれ縦横2つずつスロットのある箱を作成しました。合計8つあるスロットのそれぞれに、SDカードを自分が正しい(自然だ)と思う向きに差し込んでもらいました。

今回の調査で使用した箱とSDカード

今回の調査で使用した箱とSDカード

2.アンケート

8つのスロットそれぞれについて、自分が差し込んだ向きにどのくらい自信があるかを0〜5点の範囲で得点をつけてもらいました。「こちらの向きであるべきだ」「こちらの向きであって欲しい」という気持ちが強いほど高い点となります。

さらに、普段よくメモリーカードを抜き差しする機器を聞きました。

アンケートにお答えいただいた方々

16歳から75歳までの男女、全25名の方から回答をいただきました。

SDカードを差し込む向き

SDカードを差し込む向きには、以下のようなパターンがあります。

(1)正面/横

ラベル面が上
ラベル面が上

ラベル面が下
ラベル面が下

(2)正面/縦

ラベル面が左
ラベル面が左

ラベル面が右
ラベル面が右

(3)上面/横

ラベル面が手前
ラベル面が手前

ラベル面が奥
ラベル面が奥

(4)上面/縦

ラベル面が左
ラベル面が左

ラベル面が右
ラベル面が右

(5)右側面/横

ラベル面が上
ラベル面が上

ラベル面が下
ラベル面が下

(6)右側面/縦

ラベル面が手前
ラベル面が手前

ラベル面が奥
ラベル面が奥

(7)左側面/横

ラベル面が上
ラベル面が上

ラベル面が下
ラベル面が下

(8)左側面/縦

ラベル面が手前
ラベル面が手前

ラベル面が奥
ラベル面が奥

では、実際の被験者は、どのようにSDカードを差したのでしょうか。

SDカードを差し込む向き

8つのカードスロットのうち、カードを差し込む向きが人によってバラつく場合と一致する場合がありました。

1.上下では全員がラベル面を上に

全員一致したのは、(1)正面/横、(5)右側面/横、(7)左側面/横で、いずれもラベル面を上にするか下にするかを判断しなければならないケースでした。この場合、全ての被験者はラベル面を上にするのが正しい(自然だ)と判断しました。おそらく、ラベルが見える向きが自然で安心ということでしょう。

2.左右ではほとんどの人がラベル面を左に

(2)正面/縦、(4)上面/縦は、ラベル面を左右どちらにするかを判断しなければならないケースですが、多くの人は、ラベル面を左に向けてカードを差し込みました。左右では、もっと意見がバラつくと予想していたのですが、意外な結果でした。

右手でカードを持った場合、ラベルが見えるように親指と人差し指でカードをつまんで、そのまま縦のスロットに差すとラベル面は左に来ます。こんなことから、ラベル面を左に向ける人が多かったのかもしれません。ただし、今回の調査では、どちらの手でカードを挿入したか、被験者の利き手はどちらかという記録は残していませんので、推測に過ぎません。

右手でラベルが見えるように持つ そのまま縦のスロットに差す

右手でラベルが見えるように持って、そのまま縦のスロットに差すと、必然的にラベル面は左側になる

3.手前と奥では、スロットによってまちまちの結果に

ラベル面を手前に向けるか奥に向けるかを判断するケースは、(3)上面/横、(6)右側面/縦、(8)左側面/縦の3つですが、傾向が異なりました。

(3)上面/横は、8つのスロットの中でも最も見解が分かれましたが、ラベル面を手前に向ける人がやや上回りました。私の予想では、カードを差し込む際ラベルが見える向きが圧倒的に支持されると思っていたので、この結果は意外でした。

(6)右側面/縦は、全員一致ではないもののラベル面を手前にする人が圧倒的に多いという結果でした。一方、(8)左側面/縦の場合も、ラベル面を手前にする人の方が多くなりましたが、意外に意見が割れました。スロットが機器の右側面にあるか左側面にあるかの違いだけであるにもかかわらず、このように傾向が違うのは実に興味深い結果です。

なお、今回の被験者の中には、カードの前後を逆(接点側を手前)にしてスロットに差し込んだ人が2名いました。これについても今後考える余地はあるのですが、今回の調査ではカードの裏表のみに着目しました。

前後が逆 前後が逆

今回は前後方向については議論しないものとした

自信のレベル

自信のレベル

被験者は、自分が差し込んだ向きに対して、どのくらい自信やこだわりがあったのでしょうか。

最も平均点が高かったのは、(1)正面/横、次いで(5)右側面/横、(7)左側面/横で、これらは実際に全被験者が同じ向きに挿入したスロットでした。つまりこれらのスロットについては、多くの人が確信を持ってラベル面を上向きにしたということになります。

最も平均点が低かったのは(4)上面/縦でした。実際に被験者がカードを差し込んだ向きでは、大部分の人がラベル面を左にしましたが、心の中ではあまり確信やこだわりがなく、迷いがあったことがわかります。さらに言えば、ラベル面を右にして差し込むスロットがあったとしても、それほど抵抗は感じないということかもしれません。

(3)上面/横、(8)左側面/縦は、自信のレベルも低めでした。実際にカードを差し込んだ向きも、ラベル面を手前/奥でバラついており、どちら向きに入れるか迷った結果を反映しているものと思われます。

日常メモリーカードを抜き差しする機器

日常メモリーカードを抜き差しする機器

この質問項目を作成した際、選択肢として筆者が思いつくメモリーカードを使用しそうな機器を並べ挙げたところ、あらためてその数の多さに驚きました。被験者の回答結果を見ると、人数の差はあるものの、全ての機器について日常的にメモリーカードを抜き差ししている人がいることがわかりました。

特に人数が多かったのは、予想通り携帯電話とデジタルカメラでした。次いで、家庭用プリンター、デスクトップパソコン、写真プリント店頭端末、携帯ゲーム機、と続きます。

なお、ここでは“SDカード”ではなく“メモリーカード”という表現で質問したので、回答結果にはmini SDカードやコンパクトフラッシュはもちろん、ゲームソフトのカートリッジなども含まれていると思われます。

ハードウェアを設計するにあたって

今回調査に使用した箱では、カードを差し込む向きについての表示がない状態でしたが、実際の製品ではほぼ間違いなく表示があります。今回の調査では全員一致で同じ向きにカードを差し込んだケースもありましたが、この結果を受けて、表示は必要ないと結論づけるのはよくないと思います。やはり表示によってあらかじめ正しい向きを教えてもらえることは、何物にも代えがたい安心感をユーザーに与えるはずです。

一方で、被験者の見解が分かれたり自信のレベルが低かったカードスロットについては、よりいっそうの注意が必要です。できることなら、その位置にカードスロットを置かない方がいいのでしょうが、どうしても配置する場合には、表示が重要となります。ユーザーはどちら向きにカードを入れればいいのか確信が持てず、人によって違う判断をするのですから、正しい向きを明確に示してあげる必要があります。この場合の表示には、より気づきやすく、見やすく、意味が伝わりやすいことが強く求められることになります。

感想

今回調査に使用した箱は、本来特定の製品をイメージする形状にならないよう配慮する必要がありましたが、明確な根拠もなかったので、適当に形を決めました。また、多くのデジタルカメラで、本体の底面にカードスロットが配置されているものがあり、これをどのように調査に反映させるか迷いました。筆者自身は、このような場合にはデジタルカメラ自体をひっくり返してカードの抜き差しをするので、実際には上面に配置されたスロットと同様だとみなせるような気もします。今回はひとまず正面、上面、左右側面のみを調査対象としました。

このように、今回は調査設計段階で迷うことも多かったのですが、メモリーカードを差し込む向きとカードスロットの位置や向きには何らかの関係があるという確信がありました。実際に調査を行ってみると、予想以上にはっきりとした結果が得られました。実施する側も楽しい調査でした。

調査ツールのご提供

今回調査に使用したツールのデータをご提供いたします。箱の組み立ては若干面倒ですが、もしご興味があれば、ご自分で同様の調査を行ってみてください。

調査ツール(tools.zip)をダウンロードし、解凍していただくと、以下のファイルになります。

調査ツール

ただし、SDカードは、ご自分でご用意ください。

なお、調査結果を弊社にフィードバックしていただければ幸いです。フィードバックしていただいたデータは、取りまとめて、何らかの形で公表いたします。

調査ツールをダウンロードする
調査ツール(tools.zip)をダウンロードする


2011.01.28作成 2011.09.07フォーマット修正