HR2010-03 太陽光発電を導入して、楽しく省エネ活動できてますか?

HR2010-03

太陽光発電を導入して、
楽しく省エネ活動できてますか?

2010.10.01 橋本

調査の背景

太陽光発電モニター

近年、新聞やWeb等では、毎日のように太陽光発電の話題が取り上げられており、業界だけではなく、一般市民レベルでも非常に関心度が高いテーマとなっています。政府による購入助成金制度や、発電して余った電力の買取り価格引き上げなどの後押しもあり、一昔前と比べると、導入が比較的容易となり、エコ活動が身近なものとなってきました。

太陽光発電システムは、ユーザーが何か行動することにより発電量が変化するという性質のものではなく、一度設置したら、太陽の光を浴びることで、システムが粛々と発電を続けるというものです。したがって、ユーザーとシステムの間には、発電状況がリアルタイムに表示されるモニターをユーザーが見る、という関係が成り立ちます。つまり、システムとユーザーの唯一の接点は「モニター」であり、モニターが表示する発電量や消費量、売電量などのリアルタイムの数値表示が、ユーザーの「エコ活動」や「資源節約」の動機付けとなります。

これまで一般的ではなかった太陽光発電が一般家庭に導入され、発電状況を日々刻々と表示するモニターが生活に取り込まれることで、そこで暮らす人の生活や意識にどのような変化が生じたか、省エネ活動が楽しいものとなっているか、調査してみました。

調査の方法と被験者

当社の社員、およびWeb会員の中から、太陽光発電システムを導入したご家庭を対象に、ご自宅を訪問し、導入前の期待や、導入してからのモニターとの接し方、生活の変化に焦点を当てて2時間ほどインタビューを行いました。

調査にご協力いただいた3家族の方々のプロフィールと、お使いの太陽光発電システムのモニターです。

Aさん(60代男性) 市原市在住

太陽光発電モニター

家族構成:Aさん・奥様・奥様のお母様(3名)

導入した年:2006年

導入のきっかけ:奥様のお母様が同居されるにあたり、現在済んでいる家をオール電化するのにあわせて導入。

導入にあたり太陽光発電に期待したこと:Aさんは経済効果と環境への貢献を期待。奥様は経済効果の期待と、お母様に電気代を気にせず気兼ねなく電気を使ってもらいたかったため。

Bさん(30代男性) 船橋市在住

太陽光発電モニター

家族構成:2人家族:Bさん・奥様(2名。ともにインタビューに回答)

導入した年:2009年

導入のきっかけ:Bさん、奥様ともに太陽光発電に興味を持っていたところ、Bさんが太陽光発電のモニター募集の新聞広告をみつけ、それに応募し、現在の家に導入。同時にオール電化を実施した。

導入にあたり太陽光発電に期待したこと:Bさん・奥様ともに経済効果を期待。環境への貢献はあまり関心は無かった。

Cさん(30代女性) 柏市在住

太陽光発電モニター

家族構成:ご主人・Cさん・娘・息子(4名)

導入した年:2008年

導入のきっかけ:新築に併せて導入。大の家電好きであるご主人の強い要望と営業マンの推薦による。

導入にあたり太陽光発電に期待したこと:ご主人は環境への貢献を期待。Cさんは、経済的効果を期待。当初は初期投資を回収できるか不安があった。環境への貢献にはあまり興味や期待を持っていなかった。

導入したことによる気持ちや行動の変化

太陽光発電を導入した3つのご家庭では、導入後の生活や気持ちの変化のしかたにずいぶんと差がありました。それぞれのケースを見てみましょう。

1. Aさんのケース

Aさんは、最近になって、太陽光発電で余った電力を売ることの喜びを覚えたそうです。

■導入当初

    • 普通に生活しているだけで発電していること自体が感慨深かった。
    • モニターに表示される数値を漫然と見て、現在の発電量や売電していることがわかるだけで満足していた。
    • 発電量や消費量、売電量などの具体的な変化は気にしていなかった。
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導入当初はモニターに表示される数値やグラフ表示などにはあまり関心を示さず、節電も意識していなかったようですが、あることをきっかけに、モニターとの接し方や生活が大きく変わりました。

    • 電力会社からの明細を見て、売電価格が1万円を超えたことを知った

このことがきっかけで、電気を「売る」ことへの関心が急に増し、それ以降は、少しでも多く電気を売るための生活の工夫や、モニターのチェックが増えたそうです。

■現在では

    • 少しでも多く電気を売ることへの関心が高まる。
    • 電気の無駄遣いを減らすことを意識するようになった。
    • つけっぱなしのテレビや電気を消して回る。
    • 午前中に調子よく発電していると、その日は大きな発電量が期待できるので、家中の電気製品を消して回る。

[モニターでチェックする情報]

    • 天気がよいときの朝の発電状態(発電量)
    • 家の電気製品の消費電力量
    • 一日の売電量をグラフにして確認する

Aさんは、少しでも多くの電気を売るための行動を繰り返すことで、省エネ生活が楽しくなり、太陽光発電を導入したことに満足しているそうです。しかし、そのことに気づくまでに4年かかったので、もっと早く行動を始めたかったそうです。

2. Bさんのケース

電気消費量や電気代、環境問題をあまり意識していなかったBさん夫妻の生活は、導入を境に一変したようです。

■導入当初

    • 電気代の節約を意識した生活になった。

[モニターでチェックする情報]

    • システムが稼動している日中の、発電量と消費量、売電量の数値
    • システムが稼動を終えた後の1日の発電量と消費量、売電量
    • 電気製品の使用前・使用中の消費量
    • 電力量自給率
      →奥さんは、少しでも自給率の数値を上げようと努力するが、その行為にストレスを感じていた。
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Aさんと同じく、電力会社からの明細を見たり、モニターに刻一刻表示される消費量を目の当たりにして、積極的に電気代を節約した生活を心がけるようになったそうです。

Bさんも奥さんも、頻繁にモニターの数値をチェックしていたそうですが、時間が経つに連れて、チェックする頻度や内容は減っていったそうです。

■現在では

    • 電気代の節約を意識した生活には変化は無い。
    • 環境に多少は貢献しているという程度の意識をもつようになった。
    • Bさんは節約を意識した生活を「楽しい」とは思っていないが、普通にモニターと接して、その結果を見ている。モニターのチェック回数は導入当初より大きく減ったが、節約の意識は高くなった。
    • 奥様も、モニターのチェック回数は導入当初より減った。

[モニターでチェックする情報]

    • 1日の発電総量(システムが稼動を停止した夜に確認する)
    • 電力自給率
      →奥様は、自給率を上げるための行為にストレスを感じなくなり、ゲーム感覚で楽しめるようになってきた。

チェックの頻度は少なくなりましたが、節約に対する意識は高くなったとのことです。

電気製品を使うたびに消費電力をチェックすることはなくなったのは、主要な電気製品の消費量が頭に入ったということに加え、モニターに表示される数値の桁数が少ないので、消費量の少ない製品を使っても、使用前後での変化がわかりにくいからとのことです。

購入したシステムは、今使っているモニター以外からは選ぶことができなかったそうですが、もしいくつかのモニターの中から選べたとして、表示性能の高いモニターがあったら、今の自分だったら多少値段が高くてもそれを選ぶだろう、とおっしゃっていました。

奥様は、自給率の数値がいつもより高いときはご主人にメールを送るそうです。

3. Cさんのケース

家電製品好きのご主人と、太陽光発電に期待や関心をあまり示していなかった奥様のCさんの生活はどのように変わったのでしょう。

■導入当初

    • ご主人が家族をモニターの前に集め、それぞれの画面に表示される数値とその意味を家族に説明する日々が続いた。
    • Cさんはモニターを通してどのようなことがわかるのかもよくわかっていなかった。
    • 基本的にはトップ画面を見て、ご主人が説明する内容に耳を傾ける程度だった。
矢印

Cさんは、「これまでどおりの普通の生活に、太陽光発電が加わるだけのことで、あとは太陽光発電が電力を補ってくれる」と考えていたようで、節電やエコのために積極的に何か行動するという意識は無かったようです。ところがその意識も徐々に変わったようです。

    • ご主人から繰り返し説明を受けることで数値の意味がわかってきた
    • 電力会社からの明細を見て、具体的な売電価格がわかる

このことがきっかけで、電気を「売る」ことへの関心が急に増し、それ以降は、少しでも多く電気を売るための生活の工夫や、モニターのチェックが増えたそうです。

■現在では

    • モニターの数値に対する関心がわいてきた。
    • 自分でも積極的にモニターを見るようになり、モニターのチェックがだんだん楽しくなってきた。
    • 自分自身の努力で発電量を増やすことはできない。また、必要なものを削ってまで節約しようとは思わないが、無駄を省くための節約を心がけるようになった。

[モニターでチェックする情報]

    • 前日の発電量と消費量
    • 今月の発電量と消費量
    • 前年同月の結果との比較
    • 現在の発電量
    • 電気製品使用時の消費電力量の変化
    • 瞬間最大発電量や最大発電総量が更新されたとき(更新を知らせるマークが点灯する)

さらに、最近では、電気製品の電力消費量がだいたい頭の中に入ったので、現在の消費量はあまりチェックしなくなったそうです。

子供たちも、父親から説明を受けるにともなって、モニターを見て発電量の数値が増えることが楽しいと思うようになったそうです。また、普段から電気をこまめに消すようになり、電気だけではなく、節水の意識も芽生え、水道の蛇口を無駄に開け放さないようになったそうです。

感想

どこのご家庭も、現在では太陽光発電を導入して、おおむね満足しているようです。

電力会社からの明細を見て、電気をいくら売ったかわかることによって、節約への意欲が増した、ということも共通しています。経済的なメリットを期待して導入したことに対するリアルな結果が、節電への意欲を増したといえるでしょう。

AさんやCさんは省エネ生活を楽しいと感じるようになったきっかけが、モニターではなく、電力会社からの売電価格の明細や、ご主人の丁寧な説明だったことを考えると、それに変わる何かがモニターに備わっていれば、AさんもCさんも、もっと早い段階で省エネ生活を楽しく始められたのではないかと感じます。

Cさん宅のお子様が、水道の節水も心がけるようになったということで、電力のモニターが節水の意識に結びついたというのは非常に興味深いです。

どこのご家庭も導入後5年も経っていない段階でのインタビューでした。今のところどのご家庭でも、節電やエコへの意欲が大きく失われているということは無いようです。しかし、一度導入したら10年や20年は使い続ける製品です。その間にユーザーが意欲を失わないためのモニターに求められる「性能」とは何なのか、そしてそれが現在の製品で満たせているのか、さらに10年後の結果が気になります。


2010.10.01作成 2011.09.07フォーマット修正