HR2009-11 あらゆる所にトラップが!? PNDの徒歩モード

HR2009-10

あらゆる所にトラップが!?
PNDの徒歩モード

2009.12.01 田渕

調査のきっかけ

カーナビモード

徒歩モード

カーナビモード(車内に設置) 徒歩モード(車外で持ち歩く)

カーナビの1つに、PND(Portable Navigation Device)という小型で取り外し可能な簡易型カーナビがあります。PNDにはカーナビモードの他に、徒歩モードという機能があります。

この徒歩モードを使うと、車から降りた後、目的地まで歩きながらルート案内させることができます。 私もPNDのユーザーです。私のPNDにもこの機能(徒歩モード)があります。先月、福島を旅行したとき初めてこの徒歩モードを使いました。

ところが、実際に使ってみたところ、目的地にはたどり着けましたがルート案内させて歩くのが難しく感じました。カーナビとしては普段から違和感なく使っていただけにちょっと意外でした。

その原因を探るべく、他の人にも徒歩モードを使ってもらい様子を観察することにしました。

徒歩モードを使うシーン

そもそも、どんなときにこの徒歩モードを使うのでしょうか。

主な使用シーンとして、初めて訪ねる場所の目的地(お店など)付近に駐車場がなかったり、車が通れないなどの理由で、離れたところに車を駐車し徒歩で向かうときに使うことがあるかと思います。

徒歩モードの設定方法は簡単です。目的地はそのままにして、カーナビモードから徒歩モードに変更するだけで使えるようになります。

徒歩モード

調査の方法

(1)被験者

社内スタッフ4人に協力をお願いしました。4人はいずれも、PNDの徒歩モードを使うのは今回が初めてでした。

被験者 車の運転歴 カーナビ使用頻度
(ルート案内)
Aさん(男性) 15年 1回以下/年
Bさん(女性) 25年 1〜2回/年
Cさん(女性) 10年 2〜3回/月
Dさん(男性) 15年 2〜3回/月
(2)タスク

3つのルート(目的地1、2、3)を用意し、徒歩モードだけで目的地まで歩いてもらいました。

先に述べたように、徒歩モードは知らないエリアで使うのが一般的です。本来なら、被験者が知らない離れた地域でテストをすべきです。しかし、そこまでの余裕がなかったので、スタッフもまだ歩いたことがない会社界隈(船橋市)のエリアでテストを行いました。

スタート地点から目的地までの歩行距離は、目的地1が約190m、目的地2が約120m、目的地3が約180mでした。普通に歩くと2〜3分で到着する距離です。ちなみに、カーナビモードでルート検索させると、これらと異なるルートを表示します。

目的地1

目的地1

目的地2

目的地2

目的地3

目的地3

調査結果

(1)所要時間

まず、4人全員はいずれの目的地に到着することができました。

目的地までの所要時間は以下のようになりました。

グラフ:目的地までの所要時間

平均時間をみると、目的地1(約190m)と目的地3(約180m)で5分以上かかりました。目的地2(約120m)で4分半かかりました。

被験者間で早い人と遅い人を比べると、2分〜3分の差があることがわかります。

(2)被験者の行動、様子

タスク中に観察された被験者の行動や様子を、発生場面別にまとめてみました。

被験者が間違ったり、戸惑ったりする場所で最も多かったのは、曲がり角付近でした。

頻度はカウントしていませんが、被験者の行動や様子で多かったのは、以下の2つでした。

この中で想定していなかった問題が、No.5「スタート地点(駐車場)に戻るとき戸惑う」でした。

テストを終え、被験者と一緒に会社に帰る際に気づいたのです。

これを見ると、徒歩モードを開始した直後から迷い出しており、目的地に向かう途中や反対に目的地からスタート地点に戻る際など、あらゆるシーンで発生していることがわかりました。

表:被験者の行動、様子

徒歩モードで現れる、さまざまなGPSのトラップ!?

徒歩モードを使っているとき、画面上ではいろんな奇妙なことや不安なこと、不便なことが起こっていました。観察していると、まるで被験者が“トラップ”に掛けられているように見えました。

では、どのようなトラップが発生していたかいくつかご紹介しましょう。

トラップ1)現在地マークが、実際の場所と違う所に出たり、勝手に動く
トラップ1:現在地マークが、実際の場所と違う所に出たり、勝手に動く

Cさん:

Dさん:

筆者コメント:

トラップ2)ルートガイドと音声案内が合っていない
トラップ2:ルートガイドと音声案内が合っていない

Aさん:

Bさん:

筆者コメント:

トラップ3)地図に目印(建物名、店など)が少ない
トラップ3:地図に目印(建物名、店など)が少ない

Aさん:

Cさん:

筆者コメント:

トラップ4)通っていいの?と疑いたくなるような細い路地も案内する
トラップ4:通っていいの?と疑いたくなるような細い路地も案内する

Aさん:

Cさん:

Dさん:

トラップ5)駐車場に戻るとき、今まで歩いてきた案内ルートの線が消えている
トラップ5:駐車場に戻るとき、今まで歩いてきた案内ルートの線が消えている

Aさん:

Bさん:

Dさん:

筆者コメント:

被験者はこのようなトラップと苦闘しながら目的地まで歩いていました。

カーナビは、GPSの信号をキャッチして地図に現在地を表示するので、受信しにくい場所ではどうしても位置精度が落ちてしまいます。

一昔前のカーナビでは、違う所を走ったり現在地が変わったりということがよくありましたが、徒歩モードでも同じことが起こります。(トラップ1)

ここで興味深いのは、被験者はカーナビ使用者なのでGPSの特性は充分わかっているはずなのに、徒歩モードで歩くと案外戸惑ってしまうということです。

徒歩モードならではのトラップといえば4と5です。トラップ4の場合、カーナビでは車が通行できる道しか案内しませんが、徒歩モードでは人が通行できる道なら優先して案内するようです。しかし、ここまで細い道を案内するとは思いもしませんでした。もし、暗い時間帯にテストをしていたら怖くて歩けなかったかも知れません。

トラップ5は目的地からスタート地点(駐車場)に戻るときに発生しました。被験者は画面とにらめっこしながら歩いてきたので、スタート地点の緑旗(画面)が見つけられない人は、記憶を頼りに駐車場まで戻るしかなかったのです。車で目的地まで来ていれば駐車場に戻る必要はありませんが、徒歩モードではこれが問題になります。

自分なりに工夫したこと

数々のトラップをくぐり抜けた被験者達ですが、途中でどのような対応をとっていたのか訊ねてみました。

被験者 徒歩モードで自分なりに工夫したこと
Aさん

地図をずらして、建物名などを確認して進行方向を決めた。

Bさん

自分が歩く向きに併せて、PNDの持ち方を変えた。

この道は狭いから違うかも、と余計な考えを持たないで歩いた。

曲がる角が正しいかどうかは、試しに角を行き過ぎてみて確認した。
(地図上のポイントから外れるかどうかを見た)

現場の住所(番地)と地図の番地を確認して現在地を特定した。

音声だけを頼りにしない。人形の位置は結構あっているのだと思った。地図と人形の位置を頼りにした。

Cさん

カーナビなら音声案内をそのまま信用して進めるが、徒歩モードでは自分が地図を把握していないと分からなくなりそうだったので、地図をずっと見ていた。

とりあえず判断に迷ったら、歩いてみて人形が動く向きを確認すればよいことが分かった。

Dさん

建物が特定できなかったので、縮尺を変えたこと。ノースアップに固定した。

人形マークの位置が勝手に動くので、地図と風景を照らし合わせながら歩いた。

進行方向を決めるために、地図と風景を合わせていました。さらに、迷ったら来た道を戻ったり、周囲を歩いて確認していました。

これだけを見ると、まるで山歩きの読図と同じようなことをしていますね。

感想

徒歩モードを使えば最終的には目的地にたどり着くので便利だと思います。しかし、カーナビを使う気持ちで歩くと、思わぬ落とし穴に出くわします。位置精度がもっと上がればトラップ1や2はなくなりますが、GPS受信機である限りそうもいかないでしょう。

そもそも、目的地に行くには、現在地、方向、目的地の位置の3つの情報を把握することが必要です。どれか1つでも欠けると迷うはずです。徒歩モードでは、それらの情報が不正確だったり欠けたりすることがあるので迷うのかも知れません。原因は、そのような根本的なところにあるように思いました。

カーナビなら位置が正確に出るし、車が我が家という心理的な安心感もあり、復帰も早いので戸惑う機会が少ないだけなのです。

目的地までの案内は親切だったのに、元の場所に帰るときはやや不親切な印象を受けました。徒歩モードの使用シーンはいろいろあると思いますが、目的地から駐車場に戻るタスクは少なからずあるはずです。歩いてきたルートを残すか、再検索しやすいように工夫して欲しいです。

徒歩モードで歩いている最中、音声案内が周りの人に聞かれるので恥ずかしい、という意見が出ました。このご時世、周囲の人に「この人何しに来たの?」と不審がられるのは嫌ですよね。実は、テスト中も周囲の目が少し気になりました。合図はバイブレーションで、画面に案内を表示してくれると気にならないのではと思います。

個人的には、持ち運びできるPNDがとても気に入っています。徒歩モードは、あくまでカーナビの付加機能に過ぎませんが、歩く人の使い方や気持ちをこれからも製品に反映してくれればと思います。


2009.12.01作成 2011.09.07フォーマット修正